第278回相続コラム 相続登記をしないとどうなる?相続登記義務化と登記しないことのデメリット

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第278回相続コラム 相続登記をしないとどうなる?相続登記義務化と登記しないことのデメリット

第278回相続コラム 相続登記をしないとどうなる?相続登記義務化と登記しないことのデメリット

2024年4月1日より、相続登記が義務化されましたが、「そもそも相続登記って何?」、「相続登記をしないとどうなるのか?」というご相談は未だに絶えません。今回のコラムでは、相続登記とその義務化について簡単におさらいするとともに、相続登記をしないとどうなるのかについて解説したいと思います。

 

相続登記とは

人が亡くなると、その故人(専門用語で「被相続人」と呼びます)が有していた財産は、相続人に相続されます。被相続人が自宅や土地などの不動産を所有していた場合には、それらの所有権も相続人に移転することになります。

そして、不動産は一般的に価値の高い財産なため、その権利関係を明確にするために、法務局の記録簿(法務局の記録簿のことを「登記簿」と言います)に、不動産の名義や権利関係を登録しておくことができます。相続による不動産の所有権移転を登記簿に反映させることを相続登記と呼びます。

つまり、簡単にいうと、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きが相続登記というわけです。

 

相続登記義務化

法改正前は、相続登記を申請するか否かについては、権利者の自由意思に委ねられていましたが、
法改正により、相続登記を申請することは義務とされました。

つまり、相続や遺言によって不動産を取得した者は、必ず相続登記を申請しなければなりません

インターネットなどで相続登記について検索すると、相続登記の申請は任意である旨の記載を見かけることも少なくありませんが、情報が古くなっている可能性がありますので、その情報がいつの時点の情報なのか注意する必要があります。

2024年4月1日以降は、相続登記の申請は義務となっています。

 

相続登記をしないとどうなるのか

相続登記の義務化により罰則の適用がある

相続登記の義務化により、相続登記を申請することは義務とされ、法律で定められた期間内に登記を申請しないと、罰則の適用があり、10万円以下の過料に処せられることになります。

具体的には、相続や遺言によって不動産を取得した場合には、相続によって不動産を取得した日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりませんし、遺産分割協議によって不動産を取得した場合にも、遺産分割の日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

相続登記義務化の詳細は
第267回相続コラム 本日令和6年4月1日より相続登記義務化スタート」をご覧ください。

 

相続登記しないことのデメリット

相続登記を法律で定められた期間内に申請しないと罰則の適用があるだけでなく、相続登記をしないことによる様々なデメリットがあります。以下、相続登記をしないことのデメリットについて解説します。

 

不動産の売却・活用ができない

相続によって不動産を取得した相続人は、当然、その不動産の所有者ということになりますが、相続登記が未了の場合には、その不動産を売却したり、賃貸物件等として活用することが難しくなります

相続登記は、いわば“不動産の名義変更”を指すところ、他人名義のままとなっている不動産を買い取ったり、借りる人はいないのが通常だからです。

 

先に登記をした第三者に不動産を奪われる危険性

不動産の名義は、誰がその不動産の所有者であるかを示すものであり、不動産取引上の重要な要素であるため、しっかりと名義を変えておかないと、第三者に不動産を奪われる危険性があります。

例えば、ある人が亡くなり、故人の所有していた不動産を、その子であるAさんとBさんが相続したとします。AさんもBさんも法定相続分はそれぞれ1/2ずつですが、遺産分割協議により、AさんはBさんに代償金を支払い、不動産についてはAさんが単独で所有する旨の合意が成立しました。

ここで、Aさんがすぐに相続登記を申請し、名義を自己名義に変更していれば問題ないのですが、Aさんが登記を申請していないことに乗じて、Bさんが自己の不動産の共有持分をXさんに売却し、Xさんが登記を備えてしまったという場合、AさんはXさんに対して遺産分割協議により不動産を取得したことを対抗できないことになります。

つまり、Aさんは、遺産分割協議によって不動産の完全な所有権を取得したはずだったのに、名義を変更していなかったために、自己の法定相続分を超える部分について取得したことをXさんには対抗できず、その結果、AさんはXさんと不動産を共有することになってしまうということです。

もちろん、AさんとBさんの関係では、AさんはBさんに対して支払った代償金の返還を求めたり、損害賠償を請求することが可能ですが、既にBさんが代償金や持分の売却代金を借金返済のために使ってしまっていたり、また、Bさんが雲隠れしてしまったような場合には、泣き寝入りせざるを得ない可能性もあります。

民法899条の2 第1項
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

 

次の世代が困る

相続が発生し、不動産を相続したものの、相続登記をしないでそのまま放置し、その後、さらに相続が発生すると、不動産をめぐる相続関係が複雑になり、不動産を引き継ぐ次の世代が困ることになります。

相続が数世代に渡って発生すると、最終的に相続登記を申請する世代が、複数の相続に関する書類を収集し、手続きを行うことになるため、非常に手間と時間がかかります。自身の親の相続関係のみならず、祖父母の相続関係についても相続人等を調査し、さらに必要書類を遡って全て収集するのは、容易なことではありません。

子や孫の世代に相続登記申請手続きの負担を押し付けないためには、相続が発生した段階でしっかりと手続きを済ませておくことが重要です。

 

おわりに

今回のコラムでは、相続登記とその義務化について簡単におさらいするとともに、相続登記をしないとどうなるのかについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。相続登記をしないと、罰則の適用があるだけでなく、様々なデメリットがあるため、しっかりと申請することが大切となります。

当事務所では、相続に関するご相談を広く受けております。相続の手続きで、わからないこと、お困り事がありましたら、当事務所までご相談ください。初回相談は無料となっておりますので、お気軽にご相談ください。